2章 ホタル草 (2/4) ~ 世界一ごちゃごちゃした街

なんのことだかわからずに聞き返すと、カラスは通りのむこうに立っている大きくて足の長い鳥のような生き物を指さした。美しい虹色の羽毛に包まれているが、翼は見当たらない。長い鼻面はワニのように硬いウロコに覆われ牙が並び、頭はオレンジ色の飾り羽がトサカのように一列に走っていた。首はすらりと長く、鈴がジャラジャラついた首輪をつけられていて、馬くらいの背丈の体を支える強靱そうな二本の足には、猛禽を思わせるかぎ爪がついていた。尻には尻尾まで生えている。その変な生き物が、簡素な荷車のようなものをひいていた。

「あの鳥とワニの化け物みたいなのがクワッパ。ジャングルでは馬よりも便利だから、こっちではたくさん飼われてる。で、この乗り物がクワッパー」

座席は横木があるだけの粗末なものだったが、御している老人はもっと粗末な感じだった。汚れた腰巻き一丁で、あばらは洗濯板のよう。肌は炭のようで、口を開くと前歯が欠けていていた。さっきの浮浪者と見分けがつかない。「ヴァータナ宮殿まで」と頼むと、老人はブリキのラッパを鳴らしながら進みはじめた。クワッパの首の鈴がシャンシャンと鳴り、それまで動く隙もなかった人ごみが、この音を聞いて仕方なしにのそのそと割れていく。そうやって強引に突き進んでいくものらしい。たまに同じようなクワッパーともすれ違った。

クワッパーはゆっくり歩いているが、もうちょっと速く進めそうな気がした。

「もっと速くならない?」

言葉は通じないはずだが、それでも言わんとすることは伝わったらしい。老人がかけ声をかけて棒で突つくと、クワッパは突然狂ったように走りだした。さっきとは比べものにならないくらいの速さだったが、ヴァータナの人々は避け方を心得ているらしく、当たりそうで当たらなかった。迷路のような路地を右へ左へ曲がるたびに、座席から振り落とされそうになった。

「階段が……!」

クワッパーはそのまま階段を駆け下りてしまった。

おかげであっという間に、宮殿前の広場にたどり着いたが、一生分の尻餅をついてしまったような気がした。ララとカラスはおかしくてクスクス笑った。
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