4章 理不尽な罪状 (1/2) ~ 独裁者の玉座

王は嘘をつかれて怒っているんだ。言うなと言われてるけど、このままでは舌を引き抜かれてしまう。もともと嘘をつく必要なんてないんだし、正直に話せば許してくれるはずだ。

「石は私が持っています。嘘ついてごめんなさい」

すると王はうっすら笑みを浮かべ、カラスにむかって言った。

「やっぱり嘘だったか。おまえごときに騙されるほど節穴ではないぞ」

カマをかけていたのだ。これで嘘がばれてしまった。

カラスにもの凄い形相でにらまれ、ララはうつむいた。

王はさらに質問をつづけた。

「ジャングルで第三の目を持つ少年に会ったそうだな?」

「あれは作り物で……」

カラスが答えかけると、王は「おまえは黙れ。娘に聞いている」と、さえぎった。

「どうなんだ? 横にいる嘘つきのことは気にせず答えろ」

高官たちから刺すような視線を一身に受けながら、ララはためらいがちに口を開いた。

「王様の額の目にそっくりなのをつけた男の子に会いました」

「私の目は本物だ」

額の紫色の目が、生々しくまばたきする。やっぱり、王の目も、ジャングルで会った少年の目も、あとからつけているようには見えない。けど言い伝え通りなら、両方とも本物なんておかしいはずだ。在位中の王が死ぬまで後継者の第三の目は閉じてると言っていたけれど、王の目も少年の目も両方とも開いてる。それに王様はそんなに年老いていそうにも見えないし──それとも私がマヌの神話にうといだけで、王様が一度に二人選ばれるということもあるんだろうか?

「その少年のことを火だるまにしたのか?」

「だって、むこうが襲ってきたんです。マヌ人の男の人たちと一緒に」

「おまえが火だるまにしたのは、私のいとこだ。名はクレハ。私と同じく第三の目を持っている。彼を焼き殺したとすると、死罪に値する」

「えっ!?」

ララは目が点になってしまった。死罪!?

「あの子のほうが悪いのに……」

ララが思わずそう漏らすと、カラスは血相を変えてその頭を手で押しさげ、自分も土下座した。

「ご無礼をお許しください! こいつは森育ちの野人だから口のきき方を知らないもので。石を取り返したと言わないものだから、てっきり盗まれたままかと思っていました」

「ちゃんと言ったじゃない」

「馬鹿黙れ」

二人とも声を低くして言いあう。ララが頭をあげようとするのを、カラスは腕力で押さえつけていた。

「陛下のいとこ様だったとは存じあげなくて、王の真似をする不逞な輩と思い、このようなことをしてしまったのです。しかし、クレハ様は生きておられるはずです。神の目を持つお方を、非力な人間ごときが、どうやって傷つけられるでしょう? 魔法を使ったとはいえ、アリが象を噛むようなものです。石をご所望でしたら、慎んで献上いたします」

カラスは床に額を擦りつけて嘆願した。

「どうかご慈悲を!」

チタニアなまりの妙な抑揚は抜けきれていないにしろ、その気になれば、こんなに丁寧な言葉遣いでも話せるのだ。ララはカラスの手をつかんで引き離し、顔をあげて堂々と叫んだ。

「どうして謝らなきゃいけないの? 悪いことなんてしてないのに! 石はママに渡すように頼まれてあずかっているものです。王様にだって、渡せません」

「子供の言うことです」

カラスはまたララの頭に手をまわし、なおも頭を下げさせようとしている。ララは強引に床に頭を叩きつけられそうになるのに抵抗して、王の鋭い目を直視していた。
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