4章 理不尽な罪状 (1/2) ~ 独裁者の玉座

「おまえは黙っていろと言ったはずだ。見苦しい」

王が眉根をよせてひとにらみすると、またしても第三の目が光り、カラスは背中に紐をつけて引っぱられた人形のように、入り口の扉まで吹っ飛んだ。閉じた扉に両手両足を見えない力で磔にされ、口を動かしても声も出ない。

王にとっては、本当に象がアリを潰すくらい雑作もないことのようだった。第三の目でにらんだだけで、指一本動かしていないのだ。謁見の間には近衛兵もいたが、これほどの魔力があれば、改めて兵士に守ってもらう必要はなさそうだった。カラスはこれでも目は作り物と言い張るのだろうか?

「我が国では十三歳の子供でも戦場に立つ。おまえはその石がなんなのかわかっているのか?」

王の声は低く静かだ。が、腹の底からわきあがってくる怒りを、抑えているような声である。アシュラムは王の隣にいるのに、あいかわらず涼しい表情で立っているだけで、間を取り持ってくれない。

ララはカラスのほうを振り返った。

「答えろ!」

言われて、あわててむき直る。

「知りません。でも、おばあちゃんがほかの魔法使いからもらって、その人もまた別の人からもらって、大切に守ってきた石なんです。渡してはいけない人に渡すと、悪いことが起こります」

「おまえは盗みを働いているのだ。その魔石は何万年も前、我々マヌ人の祖先が、子孫のために作り出したものだ。我々マヌ人に繁栄をもたらすための魔法が、その石には封じこめられている。魔石は本来四つあったが、長い時の中で多くの人の手に渡り、今では我が国には一つしか残っていない。ほかの三つは散り散りになり、その中の一つは関係のないチタニア人の手にある。

だが四つの魔石の正当な持ち主は、マヌ王国の君主──つまりこの私だ。だから私に返せ」

王はそう言って、ぎらついた目つきで手を差し出した。その指先の一本一本に、針のようにとがった金の爪がついている。ララはその場で身構え、断固拒否した。

「何万年も前のことなんかわかりません。今はママのものです」

土地や宝石のようにずっと昔からあるものは、長い時間の中で次々と所有者が変わるものだ。第一、何万年も前には今のマヌ王は生きていないはずだし、『もともとは自分のものだった』なんて言い分はどう考えても変だ。神話に語り継がれていることが事実だという証拠はどこにもない。

「ティミトラは私の臣下だ。臣のものは、君主のもの。あれがここにいたら、私に石を献上しているはずだ」

「そんなのおかしいです。ママのものはママのものです。王様のものじゃありません」

「盗人め。クレハを殺した挙げ句、奪ったものを返さんというのか?」

「殺してないし、奪ってなんかいません」

「正直に言え」

「言ってます!」

王ははなから疑ってかかっている。言いあっているうちにも勝手に疑いを深め、どんどん目尻がつりあがってくるのがわかる。ララは王から目をそらしたくなるのを堪え、毅然とした態度を貫き通した。

「おまえはレネの兵器と神王の玉座の伝説を知っているか?」

うなずくと、マヌ王はまた根も葉もない神話を語りだした。

「四つの魔石は、レネの兵器を動かす鍵だ。いずこかに隠された神王の玉座とその石の力があれば、古の兵器を意のままに操ることができると言われている。教典をよく読んでいる者なら平民でも知っている話だが──肝心の玉座がどこにあるのか知っている者はだれもおらん。

しかし、どんな理由があろうと、そんな重大なものを見つけたからには、このままおまえたちに委ねておくわけにはいかぬ。おまえの母親にもだ。私が持っていたほうが万人のためになるのだ」

なんと言われても、強要されて石を差し出すつもりはなかった。その話が真実だったとしても、カラスの言うようにペテンの小道具にすぎなかったとしてもだ。

「私は頼んでいるのではない。命令しているのだ。最初から断るという選択肢はないのだよ」

王は威圧的に言い、ララが従うための時間をあたえた。ララはもう一度後ろを振り返った。そこではカラスが磔になったまま、ぐったりうなだれている。声は出ず、うつむいているせいではっきりとは確認できないが、なにか口を動かしてつぶやいているようにも見えた。恨み言でも言っているのかもしれない。

「もう一度命令する。石を渡せ」

ララは黙って王をにらんだ。

〈その娘から石を取りあげろ!〉
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