4章 理不尽な罪状 (1/2) ~ 独裁者の玉座

王がマヌ語で命じると、待ち構えていた数人の兵士たちが、一斉にララに飛びかかった。褐色の腕がララを捕らえ、石を探しまわった。石はまだペンダントにしたまま首からかけていたが、紐を長めにして服の下に隠し、見えないようにしてあった。一人の兵士が服の前合わせを乱暴に開いて、ペンダントを奪おうとした。

そのとき、兵士の目の前に青白い火花が散り、ほかの兵士たちもみな痺れたようにのけぞった。磔になっていたカラスが扉から剥がれて突進してくる。一瞬カラスの茶色い瞳が、金色に光って見えた気がした。解けるはずのない拘束を解かれて、まわりの高官たちがどよめく。カラスは不意打ちを食らった兵士たちを押しのけ、ララの手首をつかむと、踵を返して再び扉のほうへ走りだした。

が、二三歩踏みだしただけで、カラスは背後から猛烈な勢いで突かれたように転んでしまった。細長い絨毯の上を五、六歩分前のめりで滑り、もろに顔面をすりつけてしまった。また王の魔法だ。第三の目が光っている。

手首をつかまれていたのでララも一緒に引きずられたが、すぐに体を起こせたので、腕を引っぱって一緒に立ち上がろうとした。そのあいだに兵士たちも駆けよってくる。カラスは逆にララを自分の懐に引きよせ、ペンダントを引きちぎった。

ララの口の中に、小さな魔石が押しこまれた。それとほぼ同時に兵士たちがまわりを取りかこみ、四方から一斉に刀の切っ先が突きつけられた。さっきペンダントを奪おうとした兵士も、起きあがって刀を抜いている。

ララは床に伏せ、背中から覆い被さるように抱きしめられていた。口の中には飴玉のような感触の魔石。少し目線をあげると、ぎらついた白刃。それを見つめるカラスの顔は汗ばみ、これまでにないくらい緊張で強ばっている。それでもカラスはララの上でじっとして、腕をゆるめなかった。

ララは赤い石を飲みこんだ。恐怖で締めつけられたのどの奥に、なんとか異物を通す。あたりが静まり返っていたので、飲みこむ音がいやによく聞こえた。

兵士たちが群がってカラスを引きはがし、ララから石を吐き出させようと、口の中に手を突っこんだり、背中を叩いたり、胃のあたりを押したりした。苦しくてせきこんでしまっても、ララは這いつくばって吐きそうになるのを我慢していた。

〈ダメです。出てきません〉

カラスは頭の後ろで手を組まされて床に膝をつき、喉もとに刀を押しつけられていたが、兵士たちの言葉が耳に入ると、死刑囚のような捨て鉢な表情に、かすかに笑みが浮かんだ。

王は不愉快そうに顔をしかめた。

「それで私を出し抜いたつもりか?」

そしてそのままの表情で、ララを取り押さえている兵士たちにむかって、信じられないような命令をした。

〈腹を裂け〉

兵士たちは一瞬躊躇して王を振り返ったが、すぐにララを仰向けに倒して、二人の兵士が両手両足を押さえつけた。必死に身をよじろうとするララの隣で、もう一人の兵士が、感情の消え去った従順な目つきで、刀の柄に手をかける。生け贄を捧げる古代の神官のように──
次のページ