5章 反逆者 (2/5) ~ 狼

振り返ると、そこの屋敷の主人のニイラスではなく、伯父が立っていた。素っ裸で、手にはまっ赤に焼けた火掻き棒を持っている。

伯父はその火掻き棒を、背中に押しつけてきた。皮膚が焼ける! 悲鳴をあげて床に転がり落ちた。伯父は興奮した表情でこちらを見おろして、まだ棒を押しつけようとしている。

そのとき、黒い影が突然伯父に襲いかかった。それは金色の目をした大きな狼だった。どう猛なうなり声をあげながら牙を突き立て、あっという間に伯父を平らげてしまった。血も骨も髪の毛一本すら残らなかった。

「助けてくれてありがとう」

カラスは床にうずくまったまま狼に礼を言った。

「いいってことよ」

黒い狼は舌をだらんとたらして笑った。本当に笑ったのかどうかわからない。犬の仲間は口を開けてハアハアしていると、いつでも笑っているように見える。

ベッドの上に這いあがろうとすると、サミーがいなくなているのに気づいた。乱れたシーツだけが残っている。

「サミーは?」

カラスが聞くと狼は言った。

「ベッドの上にいたのはララだよ」

「そうだっけ?」

そう言われてみれば、そんな気がしてきた。ここには、ララを迎えにきたんじゃなかったっけ? 思い出したぞ。

「ララはどこ行ったんだ?」

狼の舌から大量のヨダレがだらだらとしたたり落ちた。

「喰っちまったよ」

「え?」

「返してやろうか?」

二三度引きつけを起こすと、狼の体が少し膨らんで、胃の中のものを勢いよく吐き出した。

血まみれの赤毛、小さな白い手首、ターコイズブルーの眼球がゴロゴロと床を転がった。あまりの衝撃に、声も出なかった。ララの破片を浴びて、部屋も俺もまっ赤だ!
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