7章 業火 (3/3) ~ 手がかりを追って

 

 

始祖鳥は残念ながら森に墜落すると同時に死んでしまった。なんとか高度を下げるまではもってくれたので、木の枝に引っかかりながら落ちただけで、大事には至らずに済んだのだが、もし雲の上からまっ逆さまに落ちていたら、三人とも即死だっただろう。旅の途中で賊に襲われたということになっているので、始祖鳥に乗ってきたことは老人には秘密である。

泥だらけの二人は井戸で服と体を洗い、アシュラムも寝汗をかいていたので水を浴びた。結局三人で床を拭き、玉ねぎの酢漬けと薄焼きのパンで簡単に腹ごしらえをしてしまうと、アシュラムはすぐにでも出発しようと提案した。そのときには正午を過ぎていたが、老人に聞いたところ、今出ればゆっくり歩いても日の暮れる前にエンゾという村に着くということだった。

三人はさっそく身支度を整え──といっても荷物などほとんどなかったが──口うるさい老人の小屋をあとにした。いつまでも墜落した場所の近くにいたら、いつ追っ手が来るかわからなかったし、老人には気の毒だが、三人とも小言を聞かされつづけるのは嫌だったのだ。

アシュラムは老人に着せてもらった服を、そのまま着ていくことにした。マヌの民族衣装では目立ちすぎる。絹の服はお礼にあげようと思ったが、老人にそう言ったら、『血まみれで使いものにならない』と逆に怒られてしまった。なら、気持ち程度にお金を渡そうすると、断固として受けとってもらえなかった。

老人は最後まで不機嫌そうに三人を送り出すと、また一人で自分の棺桶に戻っていった。その様子を振り返りながら、カラスは言った。

「あんな風にはなりたくねえや」

さっきのように敵意全開ではなく、心なしか同情も入っているようだった。

真昼の日射しは強く、少し歩いただけでも汗ばむくらいで、髪や服が乾ききっていなくても気にならなかった。固く絞っただけで、村に着くまでに完全に乾いてしまいそうだった。生温い微風が頬をくすぐり、鳥や蝉の鳴き声で森の中は騒がしい。むせ返るような緑に包まれた枝が、草に埋もれてしまいそうなケモノ道にまだらに影を作る。ふと、上空でとんびが旋回しているのを見つけると、始祖鳥ではないかと、ひやっとした。

歩きながら、ヴァータナではきちんと話せなかったことを話しあった。

「王は四つの魔石のうちの一つはマヌ王国にあると言っていたが、実は代々王に伝わる青い魔石は、一ヶ月前に盗まれてしまったんだ。ちょうど、クレハの誘拐事件と同時に。国宝を盗まれるということは王の沽券に関わることだから、公にはしてない」

アシュラムは宮廷の極秘情報を漏らした。

「同時にってことは、国宝を盗んだ奴と誘拐犯は同じ奴らだってこと?」

「王も高官たちもそう考えてる。私もだ」

「俺がクレハのこと話したら、監獄塔で話した囚人が、やったのは自分の仲間だ、なんて言ってた」

「確かなのか?」

「さあ、妄想かも」

見た感じ、ドゥーモはまともな判断ができそうにはなかった。

「クレハを解放して王にするなんて言ってたけど、誘拐されたって話も知らなかった。そういえば、権力争いで王がクレハに毒を盛ったって話本当?」

カラスは牢の中で聞いたことを思い出しながら言った。アシュラムは眉をひそめた。

「デマだ。だれかが毒を盛ったのは事実だけど、王がやったんじゃない」

「じゃあ、だれなんだ? 革命家は、クレハは本物の第三の目を持ってるけど、リュージュのは偽物だって言ってたぜ?」
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