12章 おまけ (1/1) ~ オアシスの祭り

こんなことを言うなんてめずらしい。お酒と歌と干し草で、みんないつもより素直になっている。

「おもしろそう」ララは言った。

今まであまり考えていなかったが、ママのところに着いたら、二人とはお別れになってしまう。カラスは役目を終えたあとは魔の森に戻らず、また以前のように旅をつづけるつもりでいる。アシュラムはさらわれた王のいとこや魔石を追うつもりでいるのだろう。ママに会えるのはもちろん嬉しい。でも、もっと三人で一緒にいたい、という気持ちも少なからず芽生えていた。カラスと二人きりでいたときはケンカばかりだったけれど、三人でいるようになってからは、一度もケンカしていない。気にしていた追っ手は一向にあらわれないし、もしあらわれたとしても、カラスとアシュラムがいれば、なんとか切り抜けられそうな気がした。

「どこに行くんだ?」アシュラムがたずねる。

「どこだっていいさ。どうせ行くところないし」

カラスの答えを聞いて、アシュラムは真顔になった。

「おまえ、ちゃんと将来のこととか考えてるのか? 今は楽しいかもしれないけど、いつか……」

「考えてみたことはあるよ」

ろくに相手を見もしないで、さえぎるように言う。

「──その結果、先のことは、そのときになったら考えることにした」

アシュラムはまだなにか言いたいことがありそうだったが、無駄だと悟ったのか、体を起こして話をもとに戻した。

「三人で旅するのは楽しそうだけど、俺は行けないよ。まだ、やらなきゃならないことがいっぱいある」

「それっていつ終わるの? 終わったら行こうよ」

ララは単純に考えていた。

「いつ終わるかわからない。たぶんずっと終わらない」

「なにをやるの? どうして終わらないの?」

「平和になるまで戦う。刀を取って戦争するって意味とは限らなくて、言葉でやりあう場合もあるよ。とにかく、そんなことをやりはじめると、いつまでたってもキリがないんだ」

「戦ったら平和にならないじゃない」

「放っておいてもならない」

「変なのっ」

「あほ臭っ」これはカラスだ。

「使命だから、やんなきゃなんないの?」

ヴァータナ宮殿でアシュラムが言っていたことを思い出して言った。カラスも、じれったそうに口を挟んだ。

「そんな使命やめたら? だって終わんねえんだろ? やらなきゃならないことより、やりたいことやったほうがいいよ」

「俺は嫌々やってるわけじゃない。おまえだって『ララを守る』って使命があるならわかるだろう? 一度自分で引き受けたことを途中で投げだすなんて無責任だ」

もっともな意見だ。

カラスは照れ臭そうにちらっとララのほうを見たあと、頭を掻いて、納得いったようないかないような微妙なうなり声をあげた。

「カラスはおばあちゃんから頼まれてるけど、アシュラムもだれかから頼まれてるの?」

「頼まれたわけじゃない。それが俺の生まれてきた意味なんだ。俺は使命を必要としているし、使命も俺を必要としている。宮殿にいてもいなくても、それは同じだ」

「………」

本気で言ってるんだろうか?
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