13章 再会 (2/4) ~ スパイ

なにもない狭い部屋の中央で、アシュラムが椅子に縛りつけられていた。その手前には見覚えのある男が立っている。ヴァータナから逃げるときに、始祖鳥で追ってきた眼帯の男だ! 落下している途中で姿が消えるのが見えたが、やはり生きていたのだ。

「それでどうする気だ?」

イスタファは臆する様子もなく、ララに話しかけた。

「フィアラ!」

ララはアシュラムを縛っている縄を魔法で焼き切ろうとした。が、縄が焼き切れるどころか、火すらつかない。

「眠ってるあいだにアシュラムの血を飲ませた。アノマニーの血が体の中に入ると、しばらく魔法が使えなくなる」

イスタファは笑って、ぐったりしているアシュラムの髪をつかんで頭を傾けた。左耳がなくなっていて、そこからおびただしい量の血が流れている。上半身は裸で鞭打たれた痕があり、切り取られた片耳は無造作に床に落ちていた。

ララは震えそうな手で銃を構えつづけていた。

「アシュラムをどうするの?」

「こいつがどうするかによる。俺はすぐにでも殺してやってもいいんだけどな」

上のほうからもうひとつ別の声もした。

「ガキは引っこんでろよ」

見あげると、ララと同じ歳くらいのマヌ人の少年が、天井に尻をついて座っていた。近くに置いてあるリンゴも天井にくっついていて、頭に血が上っている様子でもないので、そこだけ魔法で天地が逆転しているようだった。状況から察するに、この少年もイェルサーガの隊員のようだった。

ティミトラがやってきて、ララの前に立ちふさがった。

「ララ、やめて。銃をおろして」

「アシュラムのこと放してくれなきゃおろさない」

引き金から指を離そうとしないララにむかって、慎重に手をのばす。

「ママを撃ったりしないよね?」

相手がだれであったとしても、ここで引くつもりはなかった。ララはかがみこんだ母親の額に、容赦なく銃口を押しつけた。

「撃てるよ」

その言葉を聞いて、ティミトラは打ちのめされていた。

「いつからそんな子になっちゃったの……?」

今にも涙がこぼれ落ちそうな表情をしている。

それを見たら胸が苦しくなった。

その隙に、急に背後からイスタファの手がのびてきて、ララは銃を奪われてしまった。横を通り過ぎてはいないのに、突然部屋の外からあらわれたのだ。

「自分の子供のしつけもできねえのかよ」

そう言ってティミトラにむかって銃を投げると、イスタファの体が半透明になり、いったん消えたかと思ったら、またアシュラムの隣にあらわれた。瞬間移動したのだ。

ティミトラは銃を受け取って舌打ちした。

さっきいた部屋のドアが開いて、カラスがふらふら出てきた。能天気に「おそよー」とあいさつして、ララの後ろまで歩いてくると、部屋の中をのぞいて驚愕した。
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