13章 再会 (2/4) ~ スパイ

ララはなにもできずに部屋の入り口で棒立ちになっていた。その後ろから、また新たな人影があらわれる。

「なんだこのざまは?」

あまり緊張感のない口調でそう言ったのは、大柄で荒削りの石像のように厳つい顔をしたマヌ人の男だった。中に入ると、害虫でも見つけたように天井を見あげた。少年は切迫した表情で仲間を見おろしている。

男の深く落ちくぼんだ黒い目が、融けた熱線のように光った。その目を見た途端、カラスは猛烈な頭痛に襲われて頭を抱えながら床に落ちた。

「これ以上拷問をつづけたら、生かしたまま届けられなくなる。尋問はこのくらいにして、もう報告に行ったほうがいい。あとは俺がかわる」

男は失神しているカラスから木片を取りあげ、イスタファと並んで刀を抜いた。

「副隊長が隊長に指図するのか?」

「提案ぐらいしたっていいだろ。おまえ、最近おかしいぞ。こんな小物相手にしてやられるなんて」

イスタファは不愉快そうな顔をして、鼻をすすった。イェルサーガの副隊長らしき男は、それを見てますます怪しむような目つきになった。

「鼻風邪だ」

イスタファはそう言って逃げるように出ていってしまった。

少年も壁を歩いて床におり、ついて行こうとした。部屋を出ていく前に、副隊長が呼び止めた。

「モナン。新しい縄と傷薬と、なにか食い物持ってこい」

「そいつにやるの?」

アシュラムを見やって、モナンは嫌悪感をむきだしにした。

「そうだ。変な物持ってくるなよ。普通の飯だ」

モナンは渋々「わかったよ」と返事をして、納得いかない表情で一階に降りていった。

ティミトラはカラスのことを足で突いた。すっかり気を失ってしまって起きてこない。

「しばらく起きなそうね。気がついたら、私のところに来るように言って。話があるから」

「わかった」

「ハザーン。ありがとう」

礼を言われて、ハザーン副隊長の厳つい顔が、ほんの少しやわらいだ。

ほかの人よりは優しそうな感じがしたので、ララは母親に手を引かれながら振り返って「二人に酷いことしないでね」とお願いした。でもさっさとドアを閉められてしまい、ララはまたもといた部屋に戻されてしまった。
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