13章 再会 (3/4) ~ 古傷

  * * *

 

 

カラスは意識を取り戻すと、あらためて部屋を見まわした。

アシュラムはまた別の椅子に縛られていた。今度は鉄の拘束具までつけられている。耳を切り取られたところには膏薬を貼られ、起きているのか眠っているのか目を閉じておとなしくしていた。

ほかにいるのはハザーン副隊長だけで、床に広げた小さな敷物の上であぐらをかいていた。

「気分はどうだ?」

と聞かれ、カラスは体を起こしながら、

「……悪いよ」と答えた。

あんな騒ぎを起こしたあとなのに、カラスはどこも縛られていなかった。普通に床に寝転がっていただけだ。

二人の声を聞いてアシュラムも目を開けた。カラスとは直接目をあわさずに、くたびれ果てた顔で床に視線を落としている。耳と木くずはもう片づけられ、血痕だけが残っていた。

「アシュラム」

話しかけてもあらぬほうをむいているので、近づいてまっ正面から顔をのぞきこんだ。目があうとアシュラムはにやにや笑いだした。

「マヤマヤ……」

意味不明なことをつぶやいて勝手に吹き出している。とても正気とは思えないような表情をしていた。カラスは驚いて、

「狂ったのか?」と聞いた。

「痛み止めが効いてて意識が混濁してるんだ」とハザーンが言った。

かなり強力な薬なのだろう。おかげでもう悲痛な表情をしたり、無実を訴える哀れな弁明をしなくなっていた。笑い終わったあとは虚ろな目をして、また眠そうにまぶたを閉じてしまった。さっきは意味のないことを言って笑っていると思ったが、考えてみたら自殺した女の名前だということを思い出した。

「ティミトラが話があるから来いって言ってたぞ」

「行っていいのかよ?」

「ここにいてもしょうがないだろ。いたってまともに話せない」

「そうだけど……」

「事情があって、おまえもティミトラの娘も、ヴァータナには連れて行かないことになった」

「こいつは?」急な展開に驚いてアシュラムを指さす。

「連れてく。娘はティミトラが引き取るから、もうおまえの役目は終わりだ。話が済んだら、勝手に帰っていいぞ」

「事情ってなんだよ?」

いきなり終わりだから帰れと言われても、帰る先がない。

戸惑ってすぐには動きだせずにいると、ハザーンは言った。

「不満があるなら、ヴァータナまでついて来て、こいつの弁護をしてやるか? 俺たちは夜明け前には、船でここを発つ。それまでに決めれば乗せてってもいい」

さらに意外な申し出に、カラスは不信感をつのらせた。

「あんたらの同僚がこいつに殺されてるのに、あんたはこいつが無実だと思ってるのか?」

カラスの口調が否定的だったので、ハザーンも意外そうな顔をした。

「さっきこいつを逃がそうとしたのはおまえだろ?」
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