14章 別離 (2/3) ~ 怪しい取引

 

港に到着すると、フェズは木箱を手押しの荷車に積んだ。乾物屋にするめを売りに行ったら、港で船を探すのを手伝うと言ってくれたが、ララは一刻も早く船を探したかったのでそこで別れることにした。出入港船舶管理局の場所と、ザレスバーグに戻るにはどこで馬車に乗ればいいのかを教えてもらい、餞別に紙袋いっぱいのするめをもらった。

ララはお礼に、ポケットに入っていた飴を全部差し出した。が、フェズは、手の上にこんもり盛られた飴玉の中から、一粒だけしかつままなかった。

「これ、メロン味? うまいけど一つでいいや」

舐めると息が甘い匂いになる。

「本当にありがとう」

ララは大きく手を振って、フェズを見送った。

それから出入港船舶管理局にむかった。マヌに行くような長距離輸送船は、ここで出入港の許可を取らなければならないのだ、とフェズが教えてくれたのだ。港は広すぎるし、船も多すぎるので、まずはそこで聞いてみるのが一番だろう。

管理局は城壁の手前に張りついていた。大理石の大きな建物で、貴族の別荘のように洒落た造りだった。新築なのか、あちこちで石工が細かい部分を彫りこんでいる途中だ。それでも多くの人が忙しそうに行き交っている。

入り口近くにある大きな黒板に、これから出航する予定の船の名前と種類と行き先と出航時刻などが書きこまれていた。その中に、マヌ行きの船は一隻もない。

ちゃんと確認したいので、窓口の行列に並んだ。さんざん待ってやっと順番がまわってきたところで、今日マヌ行きの船が出る予定はないか? それとも、もう出たのか? 聞いた。

「ここは客船の券売所だよ。買わないならどいて」

窓口のおばちゃんに注意されてしまった。ララの後ろには行列ができている。次の客が今か今かと待ち構えていた。

「マヌ行きの乗船券はありますか?」

ララが聞き方を変えると、おばちゃんは指につばをつけて帳面をめくった。

「あるのは、二ヶ月先だねえ。運賃は片道で20万シグ」

「前に売られた券はいつのですか? 今朝出航のは売られてませんか?」

「前回は今月の頭だったかね」

それだと十日以上前だ。

「客船以外の船は?」

「この窓口は客船しか取り扱ってないよ。次の人!」

次の客がすかさず前に進み出て、ララは列から押し出されてしまった。

問い合わせる窓口を間違えてしまったようなので、ほかに聞けそうな窓口を探した。窓口はたくさんあって、どこも行列ができている。『税関』『旅券』『渡航申請』『船舶登録』──いろいろ案内の看板がかかっているが、全部見てまわっても、どこにたずねたらいいのかわからなかった。

右も左もわからず建物の中をうろうろしていると、思いがけず声をかけられた。

「ねえ、君。マヌに行きたいの?」
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