14章 別離 (2/3) ~ 怪しい取引

話しかけてきたのは、待合所にたむろしていた四人組だった。十六、七ぐらいの男の子三人と、女の子一人だ。各々タバコやオレンジ水を手にしてくつろいでいる。

「自分が乗るんじゃなくて、友達が乗っていったかもしれない船を探してるの」

「ふーん」

次の客船は二ヶ月後だと言っていたけど、それに乗るためにわざわざ二ヶ月待つとは思えない。きっと客船以外の船に乗ったに違いない。やっぱり、早朝に出航する、と言った通り、もう船出してしまったと考えたほうが自然だろうか。

「やっぱりマヌに行きたい」

と、ララは口にした。自分も追いかけるのだ。

「行きたいなら行けるよ」

男の子はいとも簡単にそう言った。その横で、また別の男の子が言う。

「急いでるんだろ? 俺たちならすぐに船に乗せられるぜ」

「どうやって?」

「こっそり軍艦に乗るのさ。お金を払えば乗せてくれる。最新鋭の軍艦だから、普通の船よりずっと速いよ。今いくら持ってるの?」

「10万シグ」

「ちょっと少ないけど、なんとかなるかな」

「だれにお金を払えばいいの?」

「俺たちさ」

「海兵なの?」

「ああ」

四人にはアシュラムのような軍人らしさは微塵もなく、フェズのような船乗りっぽさもなかった。四人とも、武器を携帯していないのはもちろん、色白で髪も爪も小綺麗だし、体つきは華奢で、絹のひらひらした派手な服を着ている。男の子まで耳飾りをつけている。女の子はアイシャドウと口紅をつけていて、マスカットのようなコロンのいい香りがした──女の子の海兵? ママも女兵士だから、あり得ないことはではないんだろうけど。

ララは怪しんだ。

「本当に四人とも海兵なの?」

すると今度は、

「まだ実習生だけど、コネはある」と言ってきた。

「私、全財産が10万シグなの。払ったらなにもできなくなっちゃう。もっと安くならない?」

「10万しかないって深刻だね。俺は値引きしてあげたいんだけど、上官に払う金だから、これ以上少ないと許可してもらえない。普通の運賃だって20万以上かかるところを10万なんだ。安すぎるくらいだよ」

「そっか……。ほかも探してみようかな」

「軍艦なんて乗せてくれるとこないよ。商船なんかよりずっと速いんだ。しかも商人に頼んだら、がめついから4、50万は請求されるよ。何回も言うけど、こっそり乗せるから、何人も乗せられないんだ。ほかにも乗りたい奴がいたら、もう乗れなくなる。今決めないと」

「じゃあ、乗る。いつ出られるの?」

「明々後日の早朝。日の出前に出入港船舶管理局の前に来てくれればいい。でもその前に上官に話をつけなきゃならないから、前金で5万シグ要る」

「半額も取るの?」

「10万シグは特別安いんだ。ほかの人は20万払って5万前金を払ってる」

ララはなんとなくひっかかるものを感じながら、5万シグ払ってしまった。
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