15章 ホタル草 パート2 (8/8) ~ 死人の足音

薬をもらって、とりあえずみなが病室から出ていったあと、居残った侍女に、ちょっとプルナークを呼んできてくれと頼んだ。彼女は近衛隊員全員を知っているので、プルナークと聞いて『なんで?』という顔になったが、いつものようによけいなことは聞かずに連れてきてくれた。

病室に入ってくると、呼ばれた本人も不思議そうに戸惑っていた。アシュラムはベッドの上で上体を起こし、高熱で今にも倒れそうなのを隠して、部下を近くに呼びよせた。苦痛を押し殺したその表情には、鬼気迫るものがある。

「おまえに重要な任務をあたえたい」

『重要な任務』と聞いて、プルナークの暗い目の色が変わったのがわかった。

「シャンタンに不審な動きがないか、しばらく見張っていてくれ」

彼のように真面目で存在感がなくて口が堅い男には、こういう役は適任だ。文官あがりの監査部員では血なまぐさいことになったとき対処できないが、彼なら戦闘能力もある。

「隊長の暗殺をたくらんだのはシャンタンなんですか?」

「わからないから探って欲しい。でも気をつけろ。下手な人間に知られたら、おまえの命も危なくなる」

「副隊長は隊長の後釜をねらっています」

プルナークの口からそれを聞いたのははじめてだが、前々から目にあまると思っていたようだ。自分から意見するなんてめずらしい。嬉しいことに、彼は俺の仇討ちをする気満々なようだ。

「なら副隊長にも注意しろ」

疑いたくない相手だが、副隊長にも野心はある。まだ宮廷内の人間の仕業と決まったわけではないが、自分が死んで得する人間には用心するに越したことはない。俺は回復できるのかどうかわからないが、生きてるうちにだれの仕業なのか突き止めたい。ここを動けないのがもどかしい。

「頼りにしているぞ」

「任せてください」

そのとき、笑わない男がはじめて笑顔を見せたのだった。