16章 片目の男 (3/3) ~ 拷問者

 

  * * *

 

森に降り立った始祖鳥の背から、アシュラムは手荒く突き落とされた。後ろ手に手錠をかけられているので、体をかばうこともできずに胴体から地面に叩きつけられる。見あげると、イスタファが始祖鳥から降り立つところだ。始祖鳥にはザレスバーグで取りあげられた二本の刀もくくりつけられている。二本とも素晴らしい名刀なので、どさくさに紛れて持ち出したのだ。

飛行中に別々の進路をとったので、もうここにトゥミス軍はいない。イスタファは荷物の中から縄を取り出すと、アシュラムを近くの木の幹に縛りつけた。

「俺をどうするつもりだ?」

ついさっき船上であったことのせいで、感情的になっていた。イスタファは質問には答えず、縄をきつく締めあげながら、

「とんだ偽物つかませてくれたな。本物の魔石はどこにある?」

「石ならティミトラに渡した」

「知らばっくれるな。おまえがすり替えたんだろ」

「ちゃんと本物を渡した。ティミトラのほうは調べたのか?」

イスタファは口数の多い囚人を罰するように、ただでさえきつい縄をさらに引き絞った。縄が肌にくいこみ、骨を締めあげる。

「俺にはわかる。やったのはティミトラじゃなくて、おまえだと」

アシュラムは痛みに耐えながら、まだ懲りずに質問した。

「どうして船を沈めた? トゥミス軍と手を組むなんて、帝国のスパイだったのか?」

「俺はスパイじゃない」

イスタファは煩わしげにすぐに否定し、不愉快な疑惑を払いのけた。

「シャンタンが、船を沈めろと言ったんだ。奴はおまえの言った通り、クレハに毒を盛った犯人だった。だからそれに気づいたおまえのことを、自分に火の粉が振りかからないように消したがってる。ザレスバーグでおまえを捕らえると決めたときから、この作戦は決まってた。

囚人を船で移送して、移動の速い俺だけが石を持って先に発ち、トゥミスの治安維持局に、マヌ人のテロリストの乗った船が帝国の領海にいるとたれこむ。トゥミス側もマヌのテロリストに国内をうろつかれたくないから、始末するのには協力的だ。公式じゃないが、たまにおたがい国境を越えた凶悪犯の貸し借りがある。おまえの身柄だけは引き渡してもらって、残りは皆殺しさ。

最初からおまえと一緒にテレポートできたらもっと楽だったんだが、仕方ない。むしろ船ごと沈没させたほうが、王も高官も不審がらないから、かえってよかったのかもな。トゥミス軍が船の正体に気づけば、不法入国を理由に攻撃するのは当然だし、だれもシャンタンを疑わない」

おそらく、航路はわかっていたから、ナビリア諸島に戦闘機を配備して、待ちぶせしていたんだろう。

「なんでシャンタンの片棒を担ぐ? 仲間まで殺して」

イスタファは答えない。かわりに額に妙な汗をかいていた。殺しが日常の一部になってる男でも、仲間を殺したことには罪悪感を感じているんだろうか?
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