17章 白昼夢劇場 (2/4) ~ 白昼夢

 

  * * *

 

ララがトゥミスにやって来て三日目のことだ。

時刻は昼過ぎ。ララはするめの入った紙袋を持って、早足で港にむかっていた。

船の出港は明日の早朝だというのに、お金を工面できていなかった。頼りにしていたママは見つかりそうにない。昨日から何軒も武器屋をまわったのに、一つの情報もつかめていなかった。

仕方ないので、ザレスバーグにいったん戻って、フェズにお金を貸してもらえないか頼んでみることにした。図々しい頼みだが、今晩までにほんの少しでも多くお金を用意しておきたかった。ママの家の中に売れる物がないか探してみてもいい。

駅馬車は運賃を取られるので、港でザレスバーグから来ている船を探す。頻繁にヨットが行き来しているようなので、ついでなら無賃で乗せてもらえるかもしれない。

急ぎ足で歩いていると、まだ入ったことのない武器屋を一軒見つけた。全部まわりつくしたと思っていたが、見過ごしていたのだ。とりあえず聞くだけ聞いておこうと、あまり期待せずに中に入った。

「ここでアデリーナって女の人働いてますか? 金髪の踊り子なんですけど」

店主は剣の並べ方をあれこれ工夫しながら、『いきなりなんだ?』という顔で首を横に振った。

やっぱりか……。

気落ちして出ていこうとすると、ほかの客から呼び止められた。

「待って! 待って!」

腕に竜の入れ墨の入った若者が、小走りで近よってきた。

「俺の知ってる奴かも」

「本当……?」

ララは男の少し物騒な風体を見て、尻込みしてしまった。でも彼の表情は気さくな感じだ。

「チタニア人だろ?」

「うん」

「もしかして、娘?」

「うん」

「へえー……」

入れ墨男は、改めてララのことを上から下まで観察したあと、

「それじゃっ、がんばれよっ」

と言って出ていこうとした。

「ちょっと待ってよっ。ママのこと知ってるなら、どこにいるのか教えてよ」

「ええ?」入れ墨男は困ったように振り返り、「知ってるったって、大して知ってるわけじゃないし、今どこにいるかまでわからないよ。役に立てなくてごめんな」

「それなら、ほかにもっと知ってそうな人いない? 私どうしても今すぐママに会いたいの。すごく大事な用があるの」

切羽詰まった表情で懇願されると、無視できないようで、

「今すぐじゃなきゃダメなの?」

ララはうなずいた。

「それじゃあ、知ってそうな人に聞いてみるから、ついて来なよ」

ララはにんまりした。

「ありがとう」
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