18章 無駄な努力 (3/4) ~ レネの兵器

 

扉の先にあったのは、今までいた広間とはまったく別の空間だった。まっすぐのびた通路の両脇に、紫色のかがり火が等間隔に並んでいる。が、中が明るいのはかがり火のせいだけではなさそうだった。光源はほかに見当たらないが、日の光の下で見るのと同じような色でものが見える。まわりに壁はなく、ただなにもない暗闇が広がっているように見えた。

通路の先には円形になっている場所があり、そこに三つの人影があった。

中央にいるのは、マヌ王とまったく同じ装いをした三つ目の子供。顔に妖怪じみた化粧をして、服には孔雀の羽、頭には雄牛の角のような黄金の王冠をのせている。その左隣には、影のようにまっ黒な服とマントをまとったトゥミスの貴族風の金髪の男。右隣には、頭に包帯を巻いて紫色のマヌの民族衣装を着た男が立っていた。

子供だけはプリモス製の背の高い椅子に座っていた。脚が床に備えつけになっている。第三の目があるということは、これがクレハなのだろう。すると、金髪の男がリュンケウスなのか。リチェと大して歳は違わないはずなのに、ずいぶん若く見える。もう一人の包帯の男は──……

目をこらしてすぐ、それがアシュラムだということに気づいた。

怒り狂って頭に血が昇っていたところを、ふいに後ろから強打されたような気分だった。

「なんで、おまえがここにいるんだ?」

問いかけてから、イスタファに連れてこられたのかもしれない、と思った。捕われているんだ、たぶん。

でも、アシュラムは身体的な拘束は受けていない。縄でしばられたり、手錠をかけられたりもしていないし、金襴の帯に、一度取りあげられたはずの二本の刀をさしている。

貴人が目下の者と謁見するときのように、三人はカラスが前に進み出てくるのを待っていた。円形の床の中ほどでカラスが立ち止まると、貴族風の男が笑顔であいさつした。

「ようこそ。イスノメドラの弟子」

友好的な口調だが、うわべだけだろう。

「アシュラム……、なんだよこれ?」

アシュラムの表情は硬い。かといって、助けを求めてもこなかった。

「よく来たな。船でイスタファに殺されたかと思ってた」

「どうしてここにいるんだよ?」

「見てわからないか?」

「わかんねえよ!」

カラスが叫ぶと、アシュラムの口もとに、微笑が浮かんだ。なぜ笑う? からかってんのか?

「クレハを誘拐させて、魔石を盗んだのは俺だ」

一瞬、言ってることが理解できなかった。混乱しながら、頭の中を整理してみようとする。

「……それじゃ、イスタファとぐるだったのか?」

「いや。彼は俺を止める側だ。俺はヴァータナ宮殿で赤い石を偽物にすり替えて、本物は隠し持ってた。でもティミトラの推理と違って、魔石を持ち運んでたのはトゥミスにつづく新しい国道に入るまでだ。国道沿いの最初の宿場町で、おまえたちが寝ているあいだに、書簡に入れて早馬でトゥミスに届けさせた。船から連れ出されてから、イスタファから本物の魔石のありかを聞かれて、もう片方の耳もなくなったよ。しらを切り通したけどね」

俺もララも、石が偽物だということに全然気がつかなかった。偽物を用心して服の縫い目の中に隠してたなんて思ったら、馬鹿みたいだと思った。

「魔石は今、この神王の玉座にはめこんである」

アシュラムはそう言って、クレハの座っている玉座の背もたれの一部をなでた。クレハの頭上あたりに、青い石、黄色い石、緑の石、そして奪われた赤い石がはめこまれていた。四つの石は普段より強い輝きを放っている。
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