8章 幼女と少女と女と老女 (2/3) ~ 馬と小さな鍵

 

 

ララは全部思い出して赤くなった。

「俺にうっとうしがられて、大泣きしたんだよなあ? ララ」

カラスはすごく嬉しそうにからかってきたが、ララよりもかなりあいまいにしか覚えていないようだ。

「盗みは悪いことだけど、無視なんて大人げない。すごく反省してるみたいだ。こっちにおいで、俺が慰めてあげよう」

アシュラムは蠱惑的な眼差しで手招きした。きざな台詞が似合いすぎてて、逆に滑稽だ。

「気をつけろ、ララ! こういう奴には下心がある」

アシュラムは否定しないで、わざと性悪そうな笑みを浮かべている。私をネタにふざけてるのだ、二人とも大人げない。

「女の子を泣かせて喜ぶなんて悪趣味だ」

「これは教育なんだよ。愛のムチだ。他人の物を盗むような手癖の悪いガキは、厳しくしつけないと。なあ、ララ?」

別に盗もうとしていたわけではないのだが、そのことを蒸し返すとまた面倒なことになりそうなので、ふて腐れた表情で黙っていた。あの鍵はただの飾りだったのだ。簡単に窓から捨ててしまったし、こうしてふざけているところを見ると、そんなに大切なものでもなかったんだろう。あんなに泣いて損した。

カラスはララのピンクのマシュマロのようなほっぺたを、軽く引っぱった。するとよほど変な顔だったのか、それを見て吹き出した。

ケチで被害妄想が激しいから怒ってただけのくせに、適当なこと言って!

ララはカラスのすねを蹴った。

「痛っ! このガキ、なにすんだ。ケツを出せ、叩いてやる」

ララが逃げると、追いかけてきた。

「最低っ。女の子のお尻を見るなんて」

「まだ生理も来てねえようなガキ、女じゃねえよっ!」

カラスは大きな声で、はばかりもせず言った。ちょうどこのときに戻ってきた店主は、この会話を聞いて変な顔をした。ララは陳列棚のあいだを走りまわりながら叫んだ。

「アシュラム! この変態追っ払って。恥ずかしい!」

でもアシュラムは傍観して笑ってるだけで、座ったままのんきにお茶をすすっていた。
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