10章 刃 (1/2) ~ 刀の稽古

それで一気に神経が逆立った。刀を押す手にいっそう力が入ったが、次の瞬間には魔法のように弾き飛ばされてしまい、アシュラムが斬りかかってきた。

死の危険を感じて、カラスは思わず身をすくめた。

振りおろされた刃は首筋まで紙一重というところで静止し、首と刀のあいだに青白い電流が流れた。無意識のうちに身を守ろうとして、帯電していたのだ。髪の毛まで逆立っている。変な汗をかいて背筋がゾクッとした。一瞬の出来事だったので、しっかり握っていたはずの刀がどうして飛んでいってしまったのかわからなかった。

「死ぬかと思った」

顔面蒼白で言うと、アシュラムの口元に悪童のような笑みが浮かんだ。

「寸止めできる」

カラスは刀を拾って、また懲りずに構え直した。

「俺は寸止めなんてできねえ。ほんとに斬っちまうぞ」

「無駄な気遣いだ。絶対に斬られないよ」

そう答えてアシュラムも構え直す。余裕の表情だった。

今度こそ本当に殺す気でかかったが、何度やっても結果は同じだった。まるで勝負にならない。カラスが息を切らして汗だくになっても、アシュラムは息もあがらないで涼しい顔をしたままだった。

「休む?」

しばらくしてアシュラムのほうから声をかけてきた。

「まだ、平気だ」

激しい呼吸で肩を上下させていたが、カラスはにやついていた。全力で襲いかかっても、軽く受け流されてしまうということが、意外にもおもしろかったのだ。普段は抑えなければならないものを、思う存分ぶつけられる解放感なのかもしれない。どんなに刃をむけても、相手も自分も傷つかないとわかったから、気がねする必要がなかった。

何度も繰り返すうちに、構え方はお手本に近づいていたが、その姿はアシュラムのそれとは似ても似つかないものになっていた。とにかく暴れたい一心で、無闇に刀を振りまわし、わきあがる興奮を、汗と一緒に一息ごとに吐き出している。刃と刃がぶつかるたびに、電流が走って火花が炸裂した。

途中で、森の中からララの叫び声が聞こえた。
次のページ