10章 刃 (2/2) ~ 歪んだ鏡

「死んだか?」

「まだ生きてる。どこのだれだか聞き出したいだろう?」

カラスは男の手から銃を取り、

「この銃、本物のプリモスかな?」

刀を置いて、手にした銃を構えてみた。アシュラムが手を差し出したので渡すと、銃を品定めしながら古臭いことをつぶやいた。

「本物だろうけど、銃なんかより刀のほうがいい。魔法も使えるんだから、どこかで売って金にしたほうがいいよ」

ほかになにか手がかりになるものはないかと、カラスが男をひっくり返して懐を探っていると、紙切れが出てきた。奇妙な記号のようなものが数個書きとめてある。

「なんだこれ?」

アシュラムに見せると、銃を投げ返して答えた。

「古代マヌ語だ。『地獄』って書いてある」

「古代語? なんでそんなもの?」

疑問に思ったのはアシュラムも同じらしく、男をまたうつぶせにして、背に馬乗りになって横っ面をはたいた。男が目を覚ますと、高圧的な口調で尋問した。

「おまえは何者だ? だれの手下で、なんのために石を集めてる?」

男は振り返って、

「俺は金で雇われてやっただけだ」と言った。

「だれに雇われた?」

「知らねえよ。名乗らなかった」

「聞かれたことには、素直に答えたほうが身のためだぞ」

「知らねえもんは知らねえ」

するとアシュラムは背中を足で踏みつけながら、男の左腕を不自然な角度に引っぱった。ゴキッと音がして肩がはずれ、男は悲鳴をあげた。それを見ているアシュラムは顔は、無表情だ。すごく簡単で、慣れた手つきだった。

「だれに雇われた?」

「ダリウスって男」

今度はあえぎあえぎ、そう答えが返ってきた。名前の最後にスがつくのは、マヌ人らしくない名前だ。

「マチュルクの手下か?」

男は痛みで顔を歪めながら、首を横に振った。

「ダリウスはトゥミス人だ。トゥミスを牛耳ってる悪党の親玉だよ。ダリウスは俺みたいなマヌ人の手下を使って、テロリストの仕業に見せかけようとした」

「そいつが首謀者なのか?」

「さあな」

アシュラムはもう片方の腕もつかんで、脱臼させようとした。

「待ってくれ! ほんとに知らねえんだよ! ダリウス自身も他人に雇われることがある。でも俺はボスの命令を聞くだけで、ボスがなにを考えてるのかまでは知らねえ。ボスの顔を見たこともねえんだ。なんで石ころなんか集めてんのかだって知らねえよ」

「テロリストじゃないなら、どうしてクレハを誘拐した? 宮廷にくわしい協力者はいたのか?」

「宮廷に知りあいなんていねえよ。全部指示された通りにやっただけだ。あのガキは犬みたいに石のありかを嗅ぎつける力を持ってるらしい。探すのに使えって言われた」

「彼は今どこにいる?」
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