13章 再会 (1/4) ~ 青い爪の踊り子

「そっくりだ」

フェズと呼ばれたその男は、マスターと話していたときから、いい暇つぶしとばかりにこちらの様子をうかがっていた。頭はごま白髪で、肌はシミだらけ、くたびれた服を着て背中を丸めている。が、声には若者のような張りがあるので、意外と若いのかもしれない。見ただけでは歳の判別がつかなかった。

マスターは『そっくり』と同意を得られても、まだ確信が持てないような顔をしている。

「でも、あいつは赤毛じゃないし、別に耳も遠くなかったよな?」

「治ったんじゃねえの? 髪なんて染められるし、他人のそら似にしちゃ、気味が悪いくらい似てるぜ。この子絶対、アデリーナの娘だって。賭けてもいい」

それから、カラスとアシュラムを見比べて、

「どっちが父親?」と聞いてきた。

「どっちでもないよ」

「父親はどんな奴?」

「知らないんだ」

カラスがそう答えると、フェズは笑った。

「だれの子だかわかんねえってやつか!」

ララは目を伏せて暗くなってる。フェズのほうはその答えでますます確信を強めたようで、意気揚々としている。

「やっぱり、アデリーナだよ」と断言した。

「うーん」マスターはまたうなっていたが、今度は心なしか肯定的だ。

無神経な対応をされて嫌そうな顔をしているカラスに、フェズはおもしろがって耳打ちした。

「アデリーナは町中の男とやりまくってる。俺らみてえんじゃだめだけど、若けえのが好きなんだ。あんたも頼んでみればお相手できるかもよ」

「………」

ララは椅子から飛び降りて、カラスの袖をつかんだ。

「ねえ、なんの話?」

「アデリーナはすげえ気前がいいってさ」

フェズはそのやり取りを聞いて含み笑っている。

アシュラムは相手にしないでマスターに話しかけた。

「会って確かめたいんで、そのアデリーナの家、教えてもらえませんか?」

「町のど真ん中にある青い丸屋根の鐘つき堂から、靴屋のあるほうに曲がって、ずーっと道なりに進んでいって、アーモンドの木のある家がそうだ。しょっちゅうトゥミスに働きに出てるから、いるかいないかわかんないけどな。この辺はみんなそうだ。働ける奴は出稼ぎに行ってる」

ふぐ風船に馬だけあずけて、教えられたとおりに歩いていった。

町のはずれのほうには、空き家になっている家が何軒もあった。明かりのついてない廃屋が立ち並ぶ中で、一軒だけ木戸の隙間から明かりが漏れている家がある。庭はないが、家の前に大きなアーモンドの木が生えている。木の枝は二階の窓にまで届いていて、屋上では風見鶏がまわっていた。

ララは深呼吸して、青く塗られたドアをノックした。カラスとアシュラムも緊張しているように見える。カラスは無意識のうちに髪をなでつけていたが、強力にくせがついているので全然整っていなかった。

ドアのむこうから「だれ?」という女性の声がした。最後に声を聞いたのが五歳のときだったので、ララは母親の声が思い出せなかった。とまどいながら、

「私、ララっていいます」と名乗った。
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