13章 再会 (1/4) ~ 青い爪の踊り子

ドアが開くと、金髪の美女が顔を出した。今度は一目でだれだかわかった。

「ママ!」

雰囲気は以前と変わっているが、ティミトラだ。娘の姿を認めると、偶然天使に出くわしたかのように、ターコイズブルーの目を輝かせた。

「ララ!」

手をのばしてぎゅっと抱きしめる。それからふと、背後にいるアシュラムに気づいて驚き、カラスを見て少し表情が硬くなった。

「近衛隊長……どうしてここに? それに、こっちにいるのは……」

アシュラムは軽くお辞儀してあいさつした。

「突然お邪魔してすいません。怪しいのが二人もおまけについていて驚かれたでしょうが、事情を説明すると長くなります」

隣でカラスは立ったまま愛想笑いを浮かべ、「はじめまして」と言った。

「この人、おばあちゃんの一番新しい弟子なの。あと、アシュラムとはヴァータナ宮殿で知りあって、ここまでずっと一緒に旅してきたんだ」

ララは抱きついたまま、嬉しそうにそう紹介した。

ティミトラは娘の肩越しに一瞬カラスに冷たい視線を送ったが、すぐに作り笑いを返した。

「こちらこそ、はじめまして」

それからアシュラムのほうをむいて、

「驚きましたけど、遠いところからわざわざお越しいただいて邪魔なことはありません。立ち話もなんですから、どうぞ入ってください」

二人の態度はとても他人行儀だ。

「ママ、耳治ったの? 悪くないの?」

「今はね……」

「よかったね!」

ララにそう言われてティミトラは笑ったが、気のせいか苦笑いのように見えた。

ドアをくぐるとすぐに居間だった。窓は閉め切られていて、ロウソクの灯が殺風景な部屋の中を照らしている。物が少なくて生活感がなく、窓辺の花瓶にはドライフラワーがささっている。わざわざ作って飾っているというより、咲いていたのがそのまま乾いてしまったようだった。テーブルの上には吸い殻が入った灰皿があり、白い壁がタバコの煙で黄ばんでしまっている。部屋の奥には二階へつづく階段があった。

「すぐに出せるのはリンゴ酒しかないんですけど、いいですか?」

ティミトラは隣の台所で客をもてなす準備をしている。

カラスは席についても、落ち着きなく部屋の中を見まわしていた。本題はあとまわしにして、当たり障りのない話題を選ぶ。

「耳が大したことなくて、ほんとよかった。髪の色、すごく自然に染まってるから、地毛みたいだ。いいね、その色。名前も変えたみたいだけど」

「気分転換よ。生き方変えようと思って」

「むこうで働いてるらしいけど、なにやってんの?」

「踊り子なの」

「へぇ、見てみたいな。すごく綺麗そうだ」

「高くつくわよ」

顔は見えないが、笑いながら答えたのがわかった。

カラスは沈黙になると落ち着かない、という感じだ。聞くほうも答えるほうも真剣さがないので、会話が全部上滑りだった。木のカップが並べられ、水差しからリンゴ酒を注がれるなり、カラスは緊張のあまり一気に飲み干してしまった。
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