13章 再会 (3/4) ~ 古傷

カラスはもう一度、夢うつつのアシュラムを見た。

確かに副隊長の言った通りだ。さっきはかばった。でも、アシュラムは自分に真実を話していなかったし、今となっては、どっちの言い分が本当なのか、よくわからなくなってしまった。いつのまにかアシュラムのことを仲間みたいに思うようになっていたが、なんでなんだろう? 俺はこいつのことをほとんどなにも知らない。今は安らかに寝息を立てているが、薬が切れたらまた拷問だ。でもそのとき俺がいなくなっていたとしても、こいつは俺のことを恨まないような気がする。

「今回の件では、まだいろいろ腑に落ちないことが残ってる。このままなにもしないで仲間を見捨てるのは、忍びないんじゃないかって思ってね。無駄な気遣いだったか?」

ハザーンはなにか企んでいそうだったが、顔を見ただけでは腹の中までは探れなかった。

カラスはなにも答えず、一人で遠い世界をさまよっているアシュラムを残して、出ていってしまった。

 

それから、よけいな考えに惑わされないうちに、すぐに呼吸を整え、隣の部屋のドアをノックした。

ティミトラが無愛想に出迎えた。中をのぞくとベッドの上にララが座っているのが見えた。こちらを見て安心した様子で微笑んでいる。カラスもそれに応えて微笑んで手を振ると、あいだにはさまれたティミトラは迷惑そうに言った。

「ほかの部屋で話しましょう。ララはここで待ってて」

階段を下りて居間に出ると、イスタファがテーブルについてナイフの刃を研いでいた。目があったが、イスタファは別になにも言うことなく自分の作業に戻った。少年兵のモナンは床で寝てる。

「やっぱり外に出ましょう」

二人きりで、手ぶらで夜道を歩きはじめた。

民家の灯りはとうに消え、冷え冷えとした月光だけが白壁の家々を照らしている。街路にあるすべてのものが、夜の底で寝静まっている。動くものといったら、薄墨色のちぎれ雲と、ときどき物陰で光る猫の目ぐらい。耳を澄ませても、遠い波音と、石畳を踏む自分たちの足音以外はなんの音もしなかった。こんな静けさの中にいると、どの家も空き家のように見える。

ポケットの中に、祭りのときに射的の景品でもらった飴が入っていた。ティミトラにすすめたら、「いらない」と冷たく断られてしまった。

「なんか会ったときから、妙ににらまれてるような気がするんだけど、なんで?」

カラスが聞くと、ティミトラは当てつけがましく聞き返した。

「わからない?」

「もしかして、宿で待ってろって言ったのに、待ってなかったから怒ってる?」

「まさか。体じゅう傷跡だらけじゃなかったら、覚えてられた自信すらないわ」

「じゃあ、気のせいだと思っていいのかな?」

ティミトラは前をむいたまま、カラスと目をあわさないで歩きつづけている。

「ララの様子が変よ」

「俺は普通だと思うけど」

「………」

「話ってそれだけ?」
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