13章 再会 (4/4) ~ 告白

体が浮きあがり、反転し、海水と砂でもみくちゃになった。つかまっていた手も離れてしまい、上下の感覚がなくなり、体中の穴という穴から水が入った。そのうち足が地面につくことに気づき、ララは咳きこみながらなんとか浅瀬まで歩いていった。海水が鼻から抜けてツンとする。耳にも水が入って音の聞こえ方がおかしい。

重い体で波打ち際に立つと、カラスの姿を探した。かなり流されたようで、離れたところでへたばっている。ずぶ濡れで砂の上に突っ伏して、肩を上下にヒクつかせている。

「私のことからかったでしょ?」

ララは怒るつもりでカラスのところまで歩いていった。無事だったからよかったものの、ふざけすぎだ。

「いつまで笑ってるの?」

近くに来てようやく、様子がおかしい、ということに気がついた。

ララはカラスの隣に膝をついてのぞきこんだ。まだ肩が小刻みに震えている。

笑っているんじゃなくて、泣いているのだ。

「なにやってんだ、俺は……」

カラスは腕に顔を埋めてララに泣き顔を見せまいとしていたが、息づかいでわかった。涙なんて絶対流さなそうだと思っていた人間が泣いているのを見て、ララはうろたえてしまった。

「おまえは、俺みてえなクズになっちゃダメだぞ」

なんの脈絡もなくそんなことを言われ、困ってしまう。

「カラスはクズなんかじゃないよ」

ララはとりあえずカラスの背中をさすりながら、もしかしたら自分が泣かせてしまったんじゃないか? と思った。

「私が怒ったから泣いてるの?」

「んなわけないだろ」

「アシュラムのことでなにか言って怒られた?」

「いや」

「ママに告白して振られたの?」

「おもしろいね……ララは」

顔は見えないが、カラスは少し笑ったようだ。

今言った以外の理由なんて見当もつかない。

ララはカラスが床に転がっていたときと同じように、上から覆いかぶさるように抱きしめた。

「私、カラスのこと好きだよ」

「おまえの『好き』は『みんな好き』の『好き』だろ? ママもおばあちゃんも、アシュラムもセトも、カシムやウルマやイフィーのことも……」

まるでそれでは悪いような言い方だった。

「違うよ。カラスのことはもっと特別に好きだよ」

カラスはゆっくりと起きあがって、腕で顔をこすった。袖に砂がついていたので、かえって顔にまで砂がついてしまっていた。

「おまえはさ、ずっと魔の森にいて、ほかに男を知らないからそんな風に思うんだよ。俺みたいなのが物珍しいんだ。でも世の中には俺よりもすごい奴なんて、そこら中にごろごろしてる。アシュラムなんかもそうだ。そんな奴らをたくさん見たら、たぶん気が変わると思うよ」

冷めた口調だ。

「アシュラムのことも好きだけど、カラスとアシュラムは違うよ」

ララはもどかしかった。

「そりゃそうだ。みんな違う。上を見たらキリがないし、隣の芝生は青く見えるもんだ。比べるのは結構だが、同じ畑で勝負しようなんて考えは馬鹿げてる。生まれ持ってるものも、目指してるものも違うんだからな。俺が他人の欠点ばかりほじくり返すのは、俺にないものばかり持ってる奴らがうらやましいからさ。欠点だらけな自分を慰めたいんだ。みじめにならないように」

カラスは砂浜の手前で打ち砕ける黒い波を見ていた。そこを越えた水は、静かに砂の上を這い、誘うように近づいてくる。

なんだか話がずれてきたな、とララは思った。
次のページ