13章 再会 (4/4) ~ 告白

「ちゃんと聞いてよ」

ララは両手でカラスの頬をはさみ、その目を自分だけにむけさせた。そして、一呼吸置き、勇気を振り絞って言った。

「愛してるの」

「『愛してる』っておまえ、どういう意味だかわかって言ってんの?」

カラスはせせら笑った。

ララは泣きそうになって目を伏せた。

「ララ?」

切なげな瞳をのぞきこんで、カラスの顔色が変わった。

「ごめん」

そう言って、ほとんど衝動的に抱きしめる。

「ごめんよ。わかってないのは俺のほうだな」

ララも応えるように背中に手をまわすと、包みこむ腕にいっそう力が入った。もっと相手の顔を見ようと上をむいたら、カラスはいきなりキスして舌を入れてきた。

突然のことに、なにが起こっているのか、一瞬わからなくなってしまった。頭がまっ白になり、聞こえていた波音も、一気に意識の彼方に吹っ飛んでいった。速く、大きくなった自分の鼓動が聞こえてきそうだった。太もものあたりになにか当たってる──ララは火にあぶられたような頭の片隅で、ポケットになにか入ってるのかなと思った。顔を離してむきあうと、カラスの目つきがいつもと違くて、別人のようで怖い。

ララは気の遠くなるような思いでカラスと見つめあったあと、ゆっくりとまぶたを閉じた。緊張して硬くなってる体の力を抜き、これからどうなっても構わない、と思った。

でも、カラスはまた唇にキスをしただけだった。

今度は長い長いキスだった。体の芯がはちみつのようにとけてしまい、自分と相手の境すらなくなってしまったような感じがした。

燃え盛る炎が、愛しさと安らぎに変わった頃、どちらからともなく、そっと唇を離した。

カラスは鼻の頭をすりあわせて、笑みをこぼした。

「気持ちよかった?」

ララは恥ずかしくて顔を隠してしまった。カラスの胸に額を押しつけ、腕の中にすっぽり収まって小さくうなずいた。耳の先までまっ赤になっている。カラスは、よしよし、と頭をなでた。

はじめてのことだらけでいっぱいいっぱいになってるララとは違い、カラスには遊び慣れてるような余裕が感じられた。今までにもほかの女の人とさっきみたいなことを何度もやっているんだろうか? と思った。カラスがエンゾで農婦たちを口説いていたときのことを思い出す。想像したら、なんだか悔しくなってきた。

自分も相手の唇を奪って夢中にさせてやろうと思ったら、意地悪く指で止められてしまった。

「かわいい」

愛おしげに目を細め、舌と唇を指先でなぞる。

「そろそろ帰ろっか。寒くなってきた」

二人とも、さっきからずぶ濡れのまま夜風にあたっているのだ。のぼせあがっているからララは冷えてなかったが、言われたら本当に寒気がした。けれどララは、立ちあがりかけたカラスの手を握って引き止めた。

「戻ったらママがいるから一緒にいられないよ。さっきも、カラスもアシュラムも私を助けてくれた命の恩人で、いい人だって説得したのに、全然聞いてもらえなかった。二人とも私のことだましてる悪い男だから、近よっちゃダメだなんて言うの。カラスのことなんか全然知らないクセに、酷いよ」

勝手に家を出ないように言われてたから、さっきはだれにも気づかれないように、二階の窓からアーモンドの木をつたって家を抜け出してきたのだ。

「そっか……」

カラスはあたりを見まわしながら答えたので、ララにはその表情は見えなかった。遠くに桟橋と掘っ立て小屋を見つけ、「あっちに行こう」と指さした。小屋の中なら風にあたらなくて済む。
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