15章 ホタル草 パート2 (1/8) ~ お化け屋敷と小さな鳥

その答えにアシュラムが絶句していると、大工は怪訝そうな顔をした。どうもこちらの意図することが通じていないらしいので、

「責任者はどこだ?」と聞いた。大工が「親方ー!」と呼ぶと、新米に怒鳴り散らしていた年長の男が悠々と歩いてきた。ねじり鉢巻をして、ごま塩の無精髭だ。アシュラムはきつい口調で苦情を言った。

「俺はあんたにそこの巣を取らないでくれって言ったよな?それでちゃんと作業できるか確認したし、あんたもできると言ったはずだ」

親方は動じなかった。

「今朝来たら、鷹に襲われたみたいで、ヒナがいなくなってたんです。巣がもぬけの空じゃ親鳥もよりつかないので取りました」

「彼はヒナはゴミと一緒に捨てたと言ってるぞ」

さっきの大工を見やって言った。経験の浅い若い大工は困惑している。

「死骸を捨てたと言ったんです」と、親方。

どうせ指示をし忘れたんだろう。素直に詫びを入れてれば酌量の余地もあったかもしれないが、親方の誠意のない態度には怒り心頭してしまった。この程度の連絡もできない奴が、現場監督をやっているのか。

「今すぐクビだ。出てってくれ」

「そんな……! たかが鳥くらいで。あんたおかしいんじゃないか!? 作業が途中なのに、代金はどうするんだ?」

親方のほうも怒りだした。

「残りの作業は? あとなにがある?」

「テラスを組み立てる」親方は指差した。

「テラス以外の、今までやってもらった分の料金は払う」

アシュラムは見積もりの料金を覚えていたので、テラス以外の金額分をその場で財布から取り出して、親方に押しつけた。

「テラスの分も払ってくれ。途中までやった」

「やるなと言ったことをやったんだから契約違反だ」

「契約違反はそっちだ。やった分の金を払え。これじゃタダ働きだ。それにテラスの分をさっ引いても料金が足りない」

「見積もり通りだ」

「実際は見積もりよりもかかった。見積もりはあくまで目安だ」

「そんなこと、あとから言うな。これ以上は銅貨一枚だって払わないぞ」

別に金がないわけでも、せこいわけでもないが、こんな奴らにこれ以上金を払うなんて冗談じゃない。

「払え。払わなけりゃ、こっちにも考えがある」

脅されて、ますますはらわたが煮えくり返った。どんな考えだか聞いてやろうと思ったが、木材ではなく人を斬る感触を知っている男から間近でにらまれると、親方は勝手に怖じ気づいた。目つきが鋭くなって得することもある。

「帰るぞ」

親方は不平を言う職人たちに、八つ当たりで怒鳴り散らしながら、道具や木材を片づけはじめた。
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